富士フイルムはしばらくズームレンズをメインに運用していましたが、久しぶりに単焦点レンズで広角、標準、望遠の基本セットでコンパクトに撮影したくなり、マクロ用途にも使える中望遠レンズとして「XF60mmF2.4 R Macro」を購入しました。早速持ち出して何度か使用してみましたので、簡単なレビューを交えながらファーストインプレッションを書いていきたいと思います。
XF60mmF2.4 R Macro
「XF60mmF2.4 R Macro」は2012年に発売された初期のレンズです。35mm換算90mmの中望遠レンズで、マクロレンズでありながらF2.4とちょっと明るく、それでいて215gと軽量なレンズです。富士フイルムの最初の3本なので専用の金属フードが付属しているのもポイントです。
フードをとればこんな感じでコンパクトなレンズです。
レンズのフォーカス方式が「全群繰り出し式」のため、ピントを回すとレンズ自体がびよーんと伸びる仕様です。
フードの内側は遮光用の溝が刻まれており、レンズが伸びてもしっかりカバーできる長さになっています。レンズ側の穴は、恐らくですがX-Proシリーズのレンジファインダー機でも見やすいように覗き穴が設けられているのかと思います。
このようにフードを逆さまに取り付けると、レンズがすっぽり入ってコンパクトに収納できます。見た目にはいいのですが、これが運用のことをあまり考えられていない残念なフードになっています。
フードを収納した状態でレンズを外す場合、フードが全てを覆っているのでレンズ自体に指の引っ掛かる場所がなくフードを持つ必要があるため、レンズを外すために捻るとレンズの前にフードが外れます。同様にリアキャップを外す場合にもフードを外す必要があるため、レンズ交換のために都度フードを外す必要がでてくる残念仕様となってしまい、交換時にややストレスが生じました。
とはいえ金属フード自体のクオリティは高く、見た目にも一体感があります。重量もさほどではないので使っている間はとても安心感がありますね。
地味にポイントなのが39mmの小さなフィルター径でしょうか。レンズに比べてとても小さなキャップがついています。
39mmだと保護フィルターしか選択肢がないので、もしその他のフィルターが使いたければステップアップリングがいいのかと思います。
描写について
まず使ってみて感じたのは描写の安定感。開放からキッチリ解像し、全群繰り出し式なので近景から遠景にかけての描写が均一です。周辺の描写も優秀で、引いても寄ってもどんなシーンでもとても扱いやすいレンズだと感じました。
APS-Cセンサーでも60mm(35mm換算90mm)でF2.4もあればしっかり前後がボケてくれますね。ピント面からの分離もいいのか、撮影した写真からはそれ以上の立体感も感じます。
ボケ方はやや残存性のあるボケといった感じでしょうか。それでいて汚いわけではないので積極的に狙っていけます。とろっとろな背景を望むユーザーにはおすすめできませんが、ある程度背景を残すボケが好きならとてもおすすめ。個人的にこの位のボケが好きなのでいままで所有してなかったことを悔やむレンズです…。
とろとろしたボケの味わえる「FUJIFILM XF35mmF1.4 R」とは個性の違いを感じますね。このボケ方の35mmレンズが欲しいです…。
F2.4開放時の周辺減光はやや大きめでしょうか。
普通の中望遠レンズだと寄れない距離でも近づけるので撮影の幅が広がります。
色収差はちょっと出やすいでしょうか。開放で撮影していると明暗差が大きい場所にパープルなフリンジが目立ちます。絞ればある程度まで目立たなくなりますね。
Lightroomなどの現像ソフトを使えば問題なく消せますが、JPEG撮って出し派の方は注意したいポイントだと思います。
AFの動作音はDCコアレスモーターなので、動作中はガガガガ音がするレンズです。
AFの速度はお世辞にも速いとはいえませんが十分だと思います。X-T2だとやや前後が大きいので瞳AFで追い続けるのは厳しいと思います。マクロレンズなので最短撮影距離付近にピントが合っている場合状態から遠景に合わせようとすると余計に時間がかかります。遠景から最短撮影距離も同様ですね。
富士フイルムのAFは特にボディの性能による依存が大きいので、XF35mm F1.4R同様、X-T3の世代以上だとまた評価も変わるのかと思います。特に動きを追うことが多くAF-Cがメインな場合はX-T3以降がおすすめ。動作音が気になるのならその後のレンズで採用されているリニアモーター搭載レンズの方がいいのかと思います。
私はAF-Sがメインで、細かいピントはマニュアルで操作するのと、音自体まったく気にならないタイプ(むしろモーターの動作音が好き)なのでこの辺りはあまり参考にならないかと思います。
中望遠レンズとして最高なので、すっかりマクロ撮影を忘れてしまいます。
マクロ域を少しだけ使った感触としては、AF時はコントラストが高い場所なら比較的ピントが合いますが、コントラストが低い場所や中間くらいの中途半端なコントラストなどでレンズが前後に大きくジーコしてしまい、ピントが合う確率は高くはありません。これはボディ側の精度も大きいので一概には言えませんが、マクロ域のオートフォーカスは苦手だと感じました。
そしてマクロ域のMFも使いやすいとは言えず、マクロ域になるとピントの操舵角が途端に広くなり、何回転もぐるぐる回さないと最短撮影距離まで持ってこれません。逆を言えば細かいピントの調整が効くので、マクロ域との切り替えを工夫すれば使いやすくなるでしょうか。
仕様の比較
[35mm判換算]91 - 91mm相当
[35mm判換算]76 - 76mm相当
[35mm判換算]76 - 76mm相当
[35mm判換算]85 - 85mm相当
(非球面レンズ : 1枚 異常分散レンズ : 1枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(ED非球面レンズ 1枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(非球面レンズ : 1枚 EDレンズ : 2枚)
(非球面レンズ1枚 異常分散レンズ2枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(標準0.6m~∞ マクロ26.7cm~2.0m )
(39cm - ∞)
(標準0.7m~∞ マクロ0.7m~3m )
ざっくりとした富士フイルムの中望遠レンズの比較はこんな感じです。富士フイルムのレンズは最短撮影距離が比較的寄れないレンズが多いですね。防塵防滴にこだわりがあれば「XF50mmF2 R WR」が軽量で使いやすいでしょうか。
私の場合、持ち運ぶレンズは大抵3本で、一本は寄れるレンズがほしいので大きさ的にも重さ的にも「XF60mmF2.4 R Macro」がどんずばです。大きくぼかすことも限定的で、自分のよく使うゾーンは絞っての撮影が多いので、「明るくてボケる」レンズより、「軽量で寄れる」レンズを選んでみました。
撮ってきました
富士フイルムのレンズのいい所はやっぱりその携帯性です。フードにやや扱いにくさがあれど、215gと軽量でカメラバッグのあと一本にぴったり。それでいて引いても寄っても活躍してくれるレンズです。
富士フイルムの中望遠レンズは、個性の違うレンズが揃っているので選択が難しいかもしれませんが、その中でも大きさ、重量、画質、ボケ、マクロ性能などとてもバランスがとれたレンズだと感じます。発売年度的にも初期のレンズなので、これから検討する方は心配もあるかもしれませんが、現行のボディ程扱いやすくなっていると思います。また、私のように一度触れば懸念も吹っ飛ぶと思いますのでぜひぜひまずは一度触ってみてください。