今回は富士フイルムの広角単焦点レンズ「XF18mm F2 R」のレビューをしてみたいと思います。
特長はなんといっても軽量とそのコンパクトさ。特筆した描写をするレンズではないですが解像度は十分。18mm(35mm換算27mm)の画角は決して広すぎずでとても気軽に撮れるレンズです。今回はそんな XF18mm F2 R を私の視点と作例を交えてつらつらと書いてみたいと思います。
XF18mm F2 R

XF18mm F2 Rの発売は 2012年とXF35mmF1.4 R、XF60mmF2.4 R Macroと同時に発売された初期の3本のうちの一本になります。

116gと軽量で初期3つのレンズに限らず、APS-Cセンサーを採用した富士フイルムのXマウントレンズの中でもコンパクトな筐体でボディに取り付けてもほとんど重さを感じません。金属フードは逆付けができないですが、レンズ自体の径よりフードが大きく嵩張るということがないので、頻繁にレンズを鞄に出し入れする際にとても便利だと思います。またフードを外せばパンケーキレンズのようにも使えますね。
操作感

絞りは「カチカチ」と1/3段ずつ刻まれているクリック感のある心地のよい操作性です。ピントはややすかすかしていてほんの少しだけ引っかかりがありますが操作感が悪いということはありません。AFはDCモーターでガガガガ音がするタイプです。遅いですが広角なので特に問題ないでしょう。

このレンズにはフードの先に取り付けることができるシリコン製のキャップがついています。このキャップがことの他不評で、レンズの外装と合わないし鞄の中でいつの間にか外れていたり。例に漏れず私も嫌いなので、結局このレンズキャップは保管して、ほぼキャップなしで運用しています。


かぶせるタイプのシリコンキャップです。しっかりハマりますが、レンズの直径より大きいので鞄に入れると上下に関わらず外れやすいです。


通常の52mm対応のキャップも取り付けることができますがフードを外さないといけません。キャップを取り付けたままフードを付けることもできますが…。

このフードのおかげでかなり雑に扱ってもレンズに傷がつくことはない。と勝手に思っているので、撮影時はキャップなしで一日使うことがほとんでです。ホコリが付くことはありますがブロワーでシュッシュしてしまえばOKです。

富士フイルムのカメラにとても似合っていると思います。やっぱり角型フードはいいですね。
描写について
描写についてはJPEG撮って出しとRAWによる違い。絞りによる違いなどを見ていきます。レンズの長所と短所を知って撮影に活かしていきましょう。
レンズの歪み

ほんのり糸巻き型のような歪みでしょうか。富士フイルムのカメラは歪曲のON/OFF機能がありませんが自動補正がされていると聞くので補正後の状態かと思います。


左 : JPEG撮って出し
右 : Lightroom
Lightroomではレンズ内蔵のプロファイルが自動で当たってしまうので大きな歪曲は修正されています。JPEG撮って出しと比べてみると周辺で大きな違いが現れます。カメラ内の補正はちょっと過剰な補正か、逆に補正が足りないのか周辺が流れてしまっています。Lightroomの方は内側に入っていく形になっているのでこちらの方が自然な描写に見えると思います。


左 : JPEG撮って出し
右 : Lightroom
左側がJPEG撮って出し。右側がLightroomに読み込んだRAWをそのまま書き出したものです。
絞り別の解像度・収差
中央

中央部の解像度は開放から悪くないですが、絞るごとに改善されF5.6がピークのようです。

等倍で確認してみます(ratinaディスプレイな人は画像が荒くなるかもしれません。)。よくよく観察すると中央はF4~F5.6が解像度のピークのようです。
撮影時に絞りに余裕がある場合はできるだけF5.6~F8に設定しておくといいでしょう。
周辺の解像度と収差、光量低下

周辺の一番厳しい場所でチェックしてみます。F2の開放では周辺の解像度が悪く、引っ張られているような描写で色収差もなかなかです。周辺の流れ、解像度はF5.6から劇的に改善され、ピークはF8になるでしょうか。最後まで色収差は残っています。また、周辺の光量の低下があまり見られない所もポイントです。絞りに対して一貫した光量を保っています。

フリンジに関してはポスト処理で除去できるので現像・修正を前提に撮影すると良いかもしれません。JPEG撮って出しな人はこういった理由で評価を下げているのかと思います。


左 : RAWデフォルト
右 : RAWフリンジ軽減
フリンジは縮小してもよく分かるので、除去できるのならRAWに限らずしておいた方が仕上がりがいいでしょう。


除去したものと元の写真と比較します。このくらいのシーンでもフリンジが出てしまうので、この辺りの収差の性能を許容できるかが XF18mm F2 R の好き嫌いを分けそうです。
この手の小型の広角レンズは歪みが目立つものがありますが、XF18mmF2 Rは小型の割によく抑えられていると思います。自動補正のおかげか嫌な歪みはなく、周辺でちょちょっと歪むくらいです。
最短撮影距離が0.18m。私は広角レンズでボケを意識した写真はあまり撮りませんが、公式サイトでは「絹のようなボケ」と表現されていました。印象としては後ボケが煩くなることもなく好みな滲み。ボケ味はどうでしょうか?

意外と寄れて意外とボケます。非球面レンズが2枚使われていますが玉ボケもキレイなような?
PLフィルターと併用です。絞りの美味しい所が分かっていればギリギリの設定で狙えますね。
仕様の比較
[35mm判換算]27 - 27mm相当
[35mm判換算]24 - 24mm相当
[35mm判換算]24 - 24mm相当
(非球面レンズ2枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(非球面レンズ2枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(非球面レンズ : 2枚 異常分散レンズ : 2枚 ナノGIコート HT-EBCコーティングレンズ)
(標準0.8m~∞ マクロ18cm~2.0m)
(17cm~∞)
(15cm -∞)
富士フイルムの似た画角のレンズのスペックを比較してみました。キャラクターがしっかり分けられていて明確だと思います。後発の XF16mmF2.8 R WR は2mm広角でAFが静かなステッピングモーター、防塵防滴と使い勝手が良くなっていて新品価格も安くなってしまっています。XF18mmF2 Rは軽量、コンパクトさ意外では中々おすすめしにくいレンズでしょうか。
XF18mm F2 R のいいところ
- 116gと軽量でコンパクトなレンズ
- 歪曲収差が少ない
- 開放F2の明るいレンズ
- 開放でも光量落ちがない
- 見た目がかっこいい
- 絞りがカチカチしていて気持ちいい
XF18mm F2 R のちょっとだけ気になるところ
- シリコンキャップが外れやすい
- AFは速くない
XF18mm F2 R のわるいところ
- 色収差・フリンジが目立つ
XF18mm F2 R で撮ってきました
最初はX-Pro1用のお手軽レンズに購入しました。今でも軽量、コンパクトを生かしてサイクリングのお供に良く持ち出しています。自転車に乗っている時は自転車に乗ったまま撮ることが多いのでちょっと広角がありがたいです。さっと鞄から出してささっと撮れるレンズです。
私が撮影している範囲では、逆光時のゴーストは出ますがフレアはよく抑えられているなと思いました。ハイライトも優しく飛んでいくイメージで使えるので、夕日や朝日を収めても画になってくれます。
18mm(35mm換算約27mm)の画角は扱いやすく、これ以上広いと周辺が引っ張られるようなパース感が出てしまいます。気楽に自然に撮れる広角が欲しいのなら18mmはベストな選択肢だと思っています。
光芒はややうにうに。

思いっきりゴーストを出してみてもフレアはほとんど見られません。
こういったシーンはやはりパープルなフリング目立ってしまうので現像で修正しています。

ポートレートにもいいかも…?
サイクリングをしながらこういったシーンに出会えると持ち出して良かったと思えます。

軽量でコンパクト。解像度は十分で周辺の光量落ちも目立たず風景撮影に扱いやすい。短所を理解してポスト処理を行えば仕上がりも上々。万人におすすめできるか?といえば多少扱いづらさがあるので新しいレンズを勧めますが、しっかり向き合えばしっかり応えてくれるレンズです。
XF18mmF2 R は際立つ性能はありませんが、とても気軽に扱えて使い込む程にお気に入りになったレンズです。現在のトレンドは大型で高画質なレンズですが、私は随分前に機材の大型化を試しましたが、やっぱり小型で頑張ってるレンズが好きなんだなと改めて実感しています。