フジフイルムの「X-T20」を購入して以来、お供に必ず携帯しているのがレンズが「FUJIFILM XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」です。
キットレンズといえばカメラを購入する時にセットになっているレンズのことを差しますが、このレンズの写りが悪ければカメラの性能が疑われてしまう大事なレンズです。
今回はこの「FUJIFILM XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」の使用感や写真の写りについてレビューしていきたいと思います。
「FUJIFILM XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」
発売は2012年11月17日。Xマウント4本目、初のズームレンズとして発売されました。
標準ズームレンズといえば各社基本的にf/3.5-5.6の明るさが一般的ですが「FUJIFILM XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」はf/2.8-4と1段明るいレンズで構成されています。
その分他社のキットレンズとくらべてややお値段はお高めですが、中央から隅までしっかり解像する性能に、手ぶれ補正にコンパクトで高い質感を持つ外観、いろんなシチュエーションに対応できる優等生なレンズです。
XC16-50mmF3.5-5.6 OIS II | XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS | XF16-55mmF2.8 R LM WR | |
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レンズ構成 | 10群12枚 非球面レンズ3枚 異常分散レンズ1枚 |
10群14枚 非球面レンズ3枚 異常分散レンズ1枚 |
12群17枚 非球面レンズ3枚 異常分散レンズ3枚 |
画角 | 83.2°- 31.7° | 76.5°- 29° | 83.2°- 29° |
開放絞り | F3.5 – F5.6 | F2.8 – F4.0 | F2.8 |
最小絞り | F22 | F22 | F22 |
絞り羽 | 7枚 | 7枚 | 9枚 |
撮影距離範囲 | 0.6m | 0.6m | 0.6m |
最短撮影距離 | 広角:15cm 望遠:35cm |
広角:30cm 望遠:40cm |
広角:30cm 望遠:40cm |
最大撮影倍率 | 0.2倍 | 0.15倍 | 0.16倍 |
手ぶれ補正 | 約3.5段? | 約4段 | 非搭載 |
質量 | 195g | 310g | 655g |
フィルターサイズ | 58mm | 58mm | 77mm |
レンズ構成もそうですが金属のパーツも多用しているため、エントリーモデル用のキットレンズ「XC16-50mmF3.5-5.6 OIS II」とくらべて重くなっています。軽量なレンズがお好みな方は広角側にも広い「XC16-50mmF3.5-5.6 OIS II」のレンズもいいかと思います。
「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」の最短撮影距離は広角端で30cm、望遠端で40cmです。最大撮影倍率は0.15倍とマクロ性能はあまり良くありませんね。
現行のモデルであればカメラ側の「マクロモード」を意識せずに0.6m以内でもピントが合うようになっていまが、古いカメラだと「マクロモード」に設定する必要があるそうです(ファームウェアのバージョンによって設定の必要なし)。
f/5.6が解像度のピーク
下記のサイトが参考ですが、このレンズは全域で解像度に優れ、F4~8が画質のピーク、F5.6で一番画質が良くなるようです。風景写真を撮る際などに覚えておきたい数値です。
絞り解放ではやや周辺光量の低下が大きい
絞り解放では周辺光量の低下が指摘されています。実際にJPEGだけで使用している分には自動で補正されるのでまったく気になりません。
とはいえ光量の低下を補正するということは、その分微々たるものですが周辺の画質が下がっていることにもつながります。絞り開放での画質がいいとはいえ、光量が十分な場合の風景撮影ではf/5.6-8なりに絞ることがこのレンズの適切な運用方法かと思います。
レンズの使用感をチェックする
ズーム、フォーカスリングが気持ちいい
冬場はひんやり「FUJIFILM XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」の特長は何より金属のずっしりとした塊感でしょうか。
ズームリング、フォーカスリング共にヌーっとした重めのトルク感で、今まで触ってきたズームレンズの中でも感触は良好です。それぞれのリングにローレット加工が施されており、触っていて気持ちのいい造りになっています。
絞りリングも気持ちいい
富士フイルムのカメラ自体の特長として、全てではないですがレンズ側に絞り調整リングが採用されています。
このレンズの絞り調整リングは軽めの感触になっていますが、回すとカチカチした音が鳴り、レンズ側で絞りを変更している気持ち良さがあります。
大きさがちょうどいい
絞りがf/2.8-4と明るい割りにコンパクトにまとめられた小型の標準ズームです。全体的に高い質感なので上位モデルの標準ズームにピッタリのレンズです。
「FUJIFILM XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」で撮影した写真をみる
広角側の解像度が周辺まで抜群に良い
このレンズを使って驚くのは、絞り開放からキットレンズとは思えなレベルで隅々までしっかり解像してくれる解像度の高さです。これが当たり前の画質になってしまうとほかのキットレンズを使うのが怖くなるレベルです。
一昔前のキットレンズでは絞っても周辺の解像度が気になるような写真ですが、周辺の木々や電柱、電線までしっかり捉えています。
レンズの歪みも目立たない
という言い方は誤りかもしれませんが、フジフイルムのカメラはレンズの歪曲を自動で補正するので歪みが大きく目立つ事はありません。
先程のサイトのデータを参考にすると広角側で樽型、望遠側で糸巻き型のズームレンズとして一般的な歪曲が見られます。この歪曲もカメラ側でしっかりと補正を行ってくれるので、こういった建築物の写真でも歪みを気にする事なく撮影が行えます。昨今のデジタル補正有りきの設計がレンズの小型化にもつながっていますね。
また、レンズ側で補正を情報を持っているため、Lightroomで現像を行う場合でもしっかり補正を行ってくれます。
水平線もしっかり真っ直ぐに写ってます。これだけ直線が出るなら安心して使用することができますね。
望遠端でもしっかり解像。
よくこのレンズを評価するときに、テレ端はワイド端に比べると解像度が落ちる。と評されていますが、私が使った限りではあまり気にする必要がないレベルだと思っています。確かに絞り開放での望遠端での周辺はやや落ちている印象がありますが、1段絞っても絞りはf/5.6です。絞りに余裕があるって素晴らしいですね。
夢の国の夕暮れ時。シャープを-1に、ノイズグレイン弱で撮影した写真です。拡大してもレンガの一つ一つがしっかり描かれています。
1段明るいレンズはボケにも有利。ボケ味はややうるささが残る
普通の標準ズームに比べて1段明るく、絞り開放からの画質も良いので、ボケを使った写真も積極的に狙えるレンズです。
単焦点レンズと比べると酷な部分ですが、ボケ味はややうるささが残る描写です。絞り羽は7枚円形絞り、イルミネーションなどを写すと比較的キレイな円を描きますが、ボケの中には非球面レンズ特有の模様が出てしまっています。
望遠側での最短撮影距離付近での描写はやや甘く感じるでしょうか。ピント面が浮き出すような描写ではないことと相まって結果的にふわっとした描写に見えます。
とはいえ距離感や背景を工夫すればそれも気になりませんね。やや二重線ボケをしているようにも見えますがレンズの良いところと気になる所をしっかり把握して撮影に望みたいところです。
広角側でのボケ味は望遠に比べて滑らかに感じます。キットレンズとはいえ広角側でf/2.8の明るさなので十分に背景をぼかすことができますね。
ゴーストやフレアも良く抑えられている
レンズ内で光が乱反射して現れる「ゴースト」。
良く抑えられてはいるものの光源によってはしっかり発生します。写真では彼岸花の左下に紫色のゴーストが発生しています。角度を工夫するなど上手く使ってあげましょう。
コントラストの低下を招く「フレア」。このレンズではフレアをしっかり抑えつつも柔らかく発生しています。なくなると味気ないけどほんのりあると効果的。個人的にはとても好きな描写です。
「ヌケ感」がやや乏しい
ズームレンズであればしょうがないことですが、このレンズの欠点は、単焦点レンズやf/2.8通しの高性能ズームレンズを使った時に味わえる「ヌケ感」に乏しいことでしょうか。私はこの言葉があまり好きではないのですが、よく言われる空気感を写すことは難しく、単焦点レンズを使った時にその違いがはっきり見て取れます。
AF精度はいまいちか?
AFの速度はまぁまぁ速いですが、背景との差が出にくい被写体や、暗いシーンでのAFはピントがよく奥に抜けてしまい、AF精度はいまいちだと感じます。これもそういうものだと慣れてしまえば、マニュアルなどで対処することができますが、動体撮影を行うのであればチェックしておきたいポイントです。
フジフイルムのカメラは大体の所ですぐにAFをやめる傾向があるように見えます。これはレンズと言うか、フジフイルムのカメラとしての問題かもしれません。ファームウェアによって精度も変わっているようなので、購入したらしっかりファームウェアのバージョンを確認しましょう。
※富士フイルムのカメラはボディによってAF性能が大きく変化します。
手ぶれ補正で夜景も安心
手ぶれ補正は大きなことは言えないですが、しっかりファインダーを覗いていてもしっかり効いています。ビタ!っと止まるというよるヌルっとした止まり。広角端でチャレンジして見ましたが1/2でも確率は低いですが頑張れば撮影することができました。このぐらい止まれば車のヘッドライトをビヤーっと伸ばすことができるので表現の幅も広がりますね!
作例をいろんなシチュエーションでみる
手前の被写体にピントをあわせつつパンフォーカスにしたかったのでf/14と思いっきり絞り込んだ写真です。周辺部の草も緻密に描かれています。
広角側で1段だけ絞って撮影してみました。十分な描写力ですね。
個人的に18mmという画角が好きなのもありますが、自然な描写で気兼ねなく使っていけます。富士フイルムの中でも小さめのボディに丁度いいレンズかと思います。
軽量でコンパクトなレンズなので、ハイキングやポタリング、旅のお供などアクティブなシーンにも積極的に使いたいレンズですね。防塵防滴ではないですが、富士フイルムはボディ側でも対応している機種が少ないので問題ないと思います。
前ボケは後ボケに比べると滑らかな印象です。奥行きを出すために手前にボケを入れるシチュエーションには向いていると思います。ボケがややうるさい。と書きましたが実際そうなるシチュエーションは少ないと思います。こればかりは好みの問題にもなってくるので使ってみないと分からないポイントですね。
太陽を正面に捉えた1枚。フレアに小さいゴーストが発生しています。これくらいなら簡単に補正できますね。
「普通」以上に写せる優等生。常用するのに十分な性能
中央から隅まで絞り開放から解像度が高く、手ぶれも4段とはいえないですがしっかりと補正されるので、富士フイルムの高感度耐性と合わせて夜間での手持ち撮影でも十分使うことができます。1段明るいレンズでボケも狙うことができ、飽きのこない落ち着いたデザイン、金属の気持ちいい質感、コンパクトで携帯性も抜群。といったトータルでバランスのとれた標準ズームレンズです。
「FUJINON XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」は扱いやすさも含めて全てにおいて「普通」以上に写せる常用するのに十分なレンズ。単焦点レンズの圧倒的な写りだったり、癖になる味がある訳ではありません。だからこそ最初のレンズとしての指標や、軽量なので旅行に持ち出したり、便利に使えるレンズがとりあえず欲しい方におすすめできる1本です。