最新モデルのNikon 1 J5が発売されてから既に3年。新製品に関する噂もとんとなく、月日が流れるにつれて増えていく旧製品のお知らせ。いつかはくるなと思っていた「Nikon 1」の終焉ですが、まさか今日までニコンからなんの発表もなくフェードアウトするように終わるとは思っていませんでした。
今回は私が使っていたカメラで、初めてマウント自体が終わってしまう「Nikon 1」というカメラについて思うことを書いていきたいと思います。
初めてのミラーレスカメラだった「Nikon 1 V1」
写真を見返しましたがNikon 1 V1を購入したのは2012年の8月頃のようです。
ミラーレスカメラとしては2008年のマイクロフォーサーズ、2010年のソニーのαNEX、2011年のPentax Qに続く参入です。そういえばニコンは頑なに「アドバンストカメラ」を強調していましたね。
私が購入したのはNikon 1 V1 と1 NIKKOR 10mm f/2.8(35mm換算27mm)の薄型レンズキット。パンケーキなこのシステムは軽量でコンパクトにカバンに収まり、導入としてはとてもいいものでした。初期にリリースされたレンズは高級感こそありませんでしたがどのレンズもコンパクトで扱いやすかったです。
Nikon D90のサブとして使い、Panasonic GH3、GX7を購入してメインのマウントをマイクロフォーサーズに移ってからもしばらく併用して使っていました。
Nikonh 1 V1の印象を思い出してみると、現在の富士フイルムのミラーレスカメラと比べても遜色ないレベルにレスポンスが良く、当時としては先端を走っていた像面位相差によるキビキビとしたAF、AF追従でも10コマ/秒で撮影でき、小気味よいシャッター音の良さもあって気持ちよく撮影できました。
逆に操作面では厳しいものがあり、特に初代のNikon 1 V1では絞り優先オートなどを切り替える「撮影モード切り替えダイアル」すら存在せず、オート撮影に重きを置いた作りになっていたのが残念でした。
Nikon 1の名前の由来とは違うようですが、名前と同じ1インチのスモールフォーマット。当時はまだまだミラーレスカメラは発展途上、画質面では高感度性能とダイナミックレンジは正直厳しいものがありました。おかげで全ての写真をRAWから現像していましたが現像テクニックはその時に培ったものも多いです。
Nikon 1はスモールフォーマットを活かした速写性が最大の魅力。初代のNikon 1 V1でもAF追従時に10コマ/秒の連続撮影、AF固定で60コマ/秒と異次元の連写性能で、連写が必要な決定的なシーンも便利に撮影をすることができました。最後のNikon 1 V3ではAF追従時に20コマ/秒まで伸びていましたね。
またNikon 1 V1はニコンの一眼レフ機のサブとして強く意識して作られ、バッテリーは一眼レフ機と共通の「EN-EL15」を採用していました。おかげでミラーレスカメラらしからぬバッテリーのもちの良さだったと記憶しています。これもV2から不採用となりましたが。
1 NIKKOR VR 10-100mm f/4-5.6の便利ズーム。単品で購入すると高いレンズでしたがキットの価格が暴落していたので手に入れました。35mm換算27-270mmのズームレンズで小型で使い勝手もよかったです。解像感も悪くなくボケもきれいでした。
フラグシップモデルのVシリーズは結局V1、V2、V3の三世代で終わりました。その時々でデザインが全く異なっているのも迷走の象徴でしょうか。
V2時代のレンズはV1時代のプラスチック感のあるものとは違った金属を使った高級感のあるデザインで質も良かったですが、ラインナップ的には、F/1.4クラスの魅力的な標準の単焦点レンズ、F値が明るい通しのレンズ、マクロレンズなどの必要なレンズが出ない反面、10-30mmクラスの標準ズームが3本存在するなど迷走が続き、望遠レンズがあまり似合わないV3時代の最後に1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6といった35mm換算810mmの超望遠レンズを意地で出してきたりと、最後まで混迷を極めていたと思います。
実はV3のプレミアムキットも所有していました。取り外し可能なEVFや専用のグリップなどのオプションが楽しくクラシックな外観は所有欲を満たしてくれました。
ただ、Nikon 1の連写性を含めた手軽に撮影できる体験、1インチセンサーの画質を考えるとNikon 1のコンセプトを象徴したカメラはどうしてもV1、V2でした。V3はカメラ自体のデザインとNikon 1でやりたいことのバランスが悪く迷走の象徴のようなカメラだったと思います。
例えばこのNikon 1 V3に、スモールフォーマットを活かした10-70mm f/2.8クラスの小型でAFが爆速、防塵防滴で手ブレが良く効くレンズ、又はニコンのAF-S NIKKOR 58mm f/1.4G、富士フイルムのXF35mmF1.4 Rのような明確なレンズを出せればそれだけでも随分違ったのではないかと思います。すべてたられば論ですが1 NIKKOR 32mm f/1.2もまず換算35mm付近の焦点距離で出すべきでした。
思うところはまだまだありますが、結局Nikon 1のAF性能とポテンシャルを活かし切った高性能ズームがなかったのがNikon 1の不幸だったのではないでしょうか。
こんな最強のコンパクト広角ズームと、最強のコンパクト超望遠が有りながら持て余しすぎたと思います。
世代を重ねてイメージセンサーも進化しました。解像度だけを見てもV1が1010万画素、V2が1425万画素、V3が 1839万画素、最終的にJ5で 2081万画素、と短期間で大きく変わりました。処理エンジンがEXPEED 4AになったJ4、V3以降はJPEG画質においても評価が良く、EXPEED 5Aを搭載したJ5はポジティブな意見も良く見かけましたがかねてからのイメージを払拭することはかないませんでした。
ユーザーの大半は画素数より画質を望んでおり、当時の掲示板でも期待通りの製品が出ないことでニコンファンのフラストレーションがたまっていたことを覚えています。
初めて写真ブログを始めた時に使っていたカメラ
かめらと。の前身に当たるサイトで写真ブログを運営していましたが、その時ちょうど使っていたのがこの「Nikon 1 V1」でした。こちらに記事を移す前に色々間違えてクローズしてしまったので振り返る記事がないのが残念なところです。
おちょぼ口フードの1 NIKKOR 18.5 f/1.8。こちらをメインでよく使っていました。1インチセンサーとはいえ背景をしっかりぼかすことができました。
1 NIKKORの中ではAFが遅いのとレンズ自体が格好悪いのが欠点です。
最初の一本として持っていたパンケーキレンズの1 NIKKOR 10mm f/2.8。最短撮影距離が短かったのでテーブルフォトもできる使いやすいレンズでした。おかげで当時はご飯の写真も多かったです。
1 NIKKOR 10mm f/2.8にワイドコンバージョンレンズのNH-WM75をつけてなんちゃって20mmとして遊んでいたものです。意外とNikon 1に似合っていてお気に入りの組み合わせでした。懐かしいです。
周辺は盛大に歪みましたがこの遊びがまた楽しかったです。
見返すと意外ににも1 NIKKOR VR 10-100mm f/4-5.6のレンズを愛用していたようです。
1インチセンサーなので被写界深度が深く、全体にピントを合わせるパンフォーカスが簡単です。レンズの画質のピークも開放付近だったので風景写真でも絞りをあまり意識せずに撮影しても割と問題ありませんでした。そういった意味では誰でも扱いやすいカメラだったと思います。
逆にF/5.6を超えたらすでに回折現象(小絞りボケ)が起きて画質が悪くなるので注意も必要でした。
忘れちゃいけないのがNikon 1 V1専用ストロボ(スピードライト)「SB-N5」。Nikon 1 V1だけの専用ストロボです。
これだけでもニコンの気合の入れようが分かると思いますが、結局V2ですぐにボディのデザインを一新。小型軽量でバウンスできる使い勝手のいいスピードライトでしたが短命に終わりました。
山登りでパシャり。こちは晩年に使っていた1 NIKKOR VR 10-30 f/3.5-5.6 PD-ZOOMです。このPD-ZOOMですが非常に出来が良く、初代の1 NIKKOR VR 10-30 f/3.5-5.6に比べて画質も上々、片手での撮影もなんなくこなす優秀なズームレンズでした。
富士山でパシャり。当時はなかなか彩度高めのこってりした現像をしていたようです。
環境を変える度に現像し直している写真です。Lightroomなどの現像ソフトの進化をダイレクトで感じることができ、Nikon 1もまだまだこれからだったんじゃないかと思います。
写真を見返して、RAWから現像しているとはいえブログで使用するくらいなら十分な画質だなと思いました。
かなりラフに扱っていましたが不具合がおきることはなかったと記憶しています。そういった意味では流石のニコンです。
石川のどこかの朝日をパシャり。この1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6は当時から評判のいいレンズで、解像感もばっちりでよく写るレンズでした。
空の青が気持ちよく色ノリがとてもいいですね。これだけ写れば十分です。
ニコンのFマウントのレンズが使え、AF-SレンズならAF可能な純正マウントアダプタ「FT1」なんてものもありました。
Nikon 1は2.7倍で換算するので、200mmのレンズをつければ35mm換算540mm、300mmなら810mmと超望遠の世界を簡単に味わうことができました。ファームウェアの更新で対応レンズが変わったりとドキドキさせる仕様で某掲示板を賑やかしていたのが記憶にあります。
ものは試しで使っていましたが、もともと望遠には疎くレンズもそこまでなかったので早々に手放していました。
マウント遊びもこの時に覚えました。ソニーのα7が席巻する前なので、焦点距離が2.7倍相当になってしまうNikon 1でも活発に遊ばれていました。
問題は電子接点のないレンズはフルマニュアルでの撮影になってしまうこと。画面にも設定が反映されないなど、ビデオモードで無理やりシャッターを切っていた記憶があります。この辺りの柔軟性のなさは新マウントでしっかり対応してほしいところです。
最後の写真は2015年の名古屋のようです。いろんなところに行っていろいろ撮りました。
さらばNikon 1
今手元にあるのはボロボロになったNikon 1 V1 と1 Nikkor 18.5mm f/1.8。久しぶりに触ってみましたが何事もなかったように動いてくれました。やっぱりいいカメラです。
センサーが進化し、画質、レスポンスなど、各社のミラーレスカメラが成熟したのはここ2、3年だと思います。その間ニコンは業績が悪化し、100周年でも目立った動きを見せることができず、同じく1インチセンサーを搭載した高級コンデジのDLシリーズも開発が中止になりました。その時にNikon 1の開発も終わっていたのだと思います。
ニコンのフルサイズミラーレスカメラの登場もそろそろだと思いますが、きっとNikon 1で培われたミラーレスカメラの技術と経験が活かされるはずです。不変のFマウントなど、一見伝統を重んじて保守的に見えるメーカーですが、他のメーカーがやったことがないことをさらっと始めるのもニコンです。フルサイズミラーレスでもきっとチャレンジしたカメラになるので、1人のニコンファンとしてこれからのニコンを楽しみにしたいと思います。