富士フイルムのf/4通しの標準ズームレンズ FUJINON XF16-80mmF4 R OIS WR。2019年9月に発売されて早くも4ヶ月が経過しました。
私は XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS からの乗り換えでしたが、画質に関しては大満足、トータルでみるとあと一歩がもったいないといった所。X-Tシリーズに合わせたときの機材としてのバランスや、16-80mm(35mm換算24-122mm相当)の焦点距離は非常に使い勝手が良く、このレンズを理解する程、撮っていて頼もしい存在になってきました。今回は、そんな XF16-80mmF4 R OIS WR を私の視点と作例を交えてつらつらと書いてみたいと思います。
FUJIFILM XF16-80mmF4 R OIS WR
私が単焦点レンズをメインに使っていた時に好んで使っていた焦点距離は、20mm、28mm、35mm、50mm、85mm、135mm辺りを愛用していました。XF16-80mmF4 R OIS WR は、流石にこの広い焦点域を全て網羅することはできませんが、16mm~80mm(35mm換算24mm~122mm)と近い画角がf/4通しで使えるので、広角、標準、中望遠とメリハリをつけて撮影することができます。
一般的に小三元と言われるf/4通しの標準ズームは35mm換算で24-105mmといったレンズがほとんどですが、このレンズは画質を保ったままそのレンジからもう一つ伸ばした80mm(35mm換算122mm)まで扱える。といった所が最大の利点だと思っています。
いいところ
- 16-80mmのこれ一本で広角から中望遠をカバーする扱い使いやすい焦点距離
- 440gと比較的軽量
- 防塵防滴のありがたみ
- 6段の手ブレ補正が強力
- f/4通しのこのクラスでの画質面は素晴らしいと思う
- 開放f/4から十分高い解像度(広角端、望遠端の周辺解像度は少し落ちる)
- テレ端の解像度、コントラストも問題なし
- クリアで繊細な描写
- ボケが柔らかい
- ズーム、ピントリングの操作感がぬるっとしていて使い心地が良い
- XF10-24mmとフィルターサイズが同じ72mmで統一できる
- 色ズレなどの色収差がよく抑えられている
個人的に画質面での満足度は非常に高いです。よく使っていた XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS に比べても解像度、テレ端の画質、ヌケ感、ボケの柔らかさ、AF速度・精度、色収差などなどにおいて一回り上の性能だと感じます。X-T2へ装着したときのバランスの良さもありますが、ズームやピントリングの操作性も非常に良く、手ブレ補正や防塵防滴なども相まってスタンダード以上に使えるレンズです。
単焦点レンズのようなクリアな描写で、大きな画面で後から見返した時に思った以上に良く撮れていることが多いです。こういったズームレンズは特に望遠端で画質やコントラストが低下する傾向にありますが、このレンズはズーム全域で安定感を感じます。ボケは柔らかく、開放f/4でボケを使った表現も十分可能です。
6段の手ブレ補正は強力
6段の手ブレ補正はやはり強力です。オリンパスのような補正は期待できませんが、私の場合は手持ちですごく頑張ってシャッタースピード1秒が止まります。望遠端80mmでは1/10がしっかり止まるので、曇りの日、朝、日没の時間でもギリギリまで手持ち低ISO感度で撮影することができる頼もしいレンズです。
ズームリング、ピントリングは適度な重さとスムーズな操作感
このレンズを使っていてのフィーリングは非常にいいです。ズームレンズとピントリングは適度な重さと「ぬるー」っとした操作感で、操作をしていてとても気持ちがいいです。ピントリングはモーター駆動で、操作する速度によって回転角が変わり、細かいピント合わせもスムーズです。
個人的に欠点を上げれば、絞りの操作感には不満が残ります。絞りリングの操作感としては、購入当初は硬めでしたが使っているうちに多少柔らかくなりました。
ただ、絞り毎の動き出しに不自然な硬さが残り、止まる箇所でのクリック感が乏しいので、素早く操作をしようと思うと通り過ぎそうになります。また、ライブビュー等の画面の絞り値を見ながら絞りを変更する場合、操作をしてから画面に絞り値が反映されるのが、何故かワンテンポ遅く、これまた指定の絞り値が通り過ぎてしまいがちです。他のレンズではこんなことがないので不思議な現象です。この辺りのレスポンスの改善の要望は問い合わせフォームから伝えているので、改善してくれると嬉しいですね。
ちょっとだけ気になるところ
- 玉ボケは非球面レンズ特有の玉ねぎボケが発生
- 気をつけないとたまにAFが抜ける
- ゴーストは普通に出る
- 光芒はあまりキレイじゃない
- 絞りリングの操作性、絞りオートの位置
玉ボケは非球面レンズを使った特有の玉ねぎボケが多少目立ちます。イルミネーションなどのこういった表現が好きな方は要チェックでしょうか。
強い光源がある場合はこんな感じで普通にゴーストが現れます。ハレ切りなどをしっかり意識したいですね。
AFが抜けやすい?
撮ってきた写真を確認すると、たまにどこにもピンとが合っていない写真が撮れていることがあります。思い返すとAF-Sで一度ピントを固定し、そこからズームを操作するとAFがスッポ抜けることがあります。ファームウェアのバージョンアップ(v1.02)で大分改善されましたが、いままでこんな挙動を示したレンズがなかったのでようやく慣れましたが未だにやらかします。
わるいところ
- X-T2のメカシャッターと私の個体で相性が悪く微ブレが発生する
以前にメカシャッターによる特定のシャッタースピード(1/125前後)においての微ブレ問題があるとブログで報告をしましたが、結局メカシャッター仕様時における根本的な解決はしていません。
その後にファームウェアの更新(v1.02)が行われましたが、正直に言って多少の改善されたけど治っているわけではなく、現在も仕方無しに電子シャッターをメインで撮影しています。私の場合は風景ががほとんどで動く被写体を撮ることはほとんどないので、今の所問題ありませんが、比較的派手なシャッター音が好きで、X-T2のメカシャッターが好きで使っているのでここだけが未だに悩んでいる箇所です。この問題に関しては、富士フイルムは問題を認識しているにも関わらず、特に公式なリリースがなく、対応に不信感があるのが正直なところです。
手ブレ補正OFFでもシャッターショックの影響を受けている…?
言おうか言わまいかを悩んでいたのですが。手ブレ補正に関するファームウェアの更新が1回だけで、その後のアナウンスも特にないので書いておきます。
上の画像は三脚に載せて撮影したらどうなるのかをテストしたものです。このレンズは三脚に乗せれば自動で手ブレ補正がOFFになるなるはずなので、手ブレ補正ON、OFFに大きな差はありません。上半分のメカシャッターと下半分の電子シャッターの比較が主になります。
これを見るに、このレンズはボディのシャッターショックの影響を大きく受けているレンズだと感じました。私の愛用しているX-T2は、富士フイルムの中だとシャッターショックが比較的大きめだと感じる機種ですが、このボディで撮影して等倍で確認すると、シャッタースピード、手ブレ補正の入切問わずで写真がほんの少しだけ眠く感じます。
それと比べてシャッターショックの影響を受けない電子シャッター(下半分)で撮影するとどの焦点域でも解像度が高く感じ、画が非常に安定します。このことから手ブレ補正のユニット自体か何かがシャッターショックの影響を受けていると推測せざるをえず、同様のテストを単焦点レンズでも試しましたがメカシャッターでも問題がなかったため確信は深まりました。
ボディ内手ブレ補正に対応しているX-H1がシャッターショックの少ないフェザータッチシャッターを採用したのは、富士フイルムは手ブレ補正機構とシャッターのバランサーの成熟度があまり高くないのかなとも邪推できます。こんな考えを元にすると、他のレビューサイトの記事や個人のレビューはこの影響を受けて評価がぶれているのかなぁ。といった考えにも至ります。
もしかしたら XF16-80mmF4 R OIS WR の初期ロットやX-T2との相性、私の個体の問題かもしれませんのでここは各自判断すべきかと思います。問題がない。という人も多くいますので。
X-T3ではキットとして販売されており、シャッターショックを軽減させるための工夫もこらしているので、新しい機種程この問題は起きにくいと推測します。
こちらのサイトはX-T3でレビューされていますが、キレッキレの描写です。やはり個体の問題か…?
メカシャッターで撮影した写真です。手ブレ補正もしっかり効いて問題ない写真がほとんどです。
同じ場所での写真です。右が微ブレが起きてしまっている写真です。こうやって比べてみればブログサイズなら特に気にならないレベルです。目を見開いて、まじまじと確認するのでなければ問題ないと思います。
このレンズを悪く言うわけではなく、ポテンシャルが発揮できていない環境があると思うともったいなく感じます。
スペックで見る
ざっくり標準の焦点域のXFレンズのレンズスペックを比較するとこんな感じです。
[35mm判換算]24 - 122mm相当
[35mm判換算]24 - 84mm相当
[35mm判換算]27 - 84mm相当
(非球面レンズ:3枚 ED非球面レンズ:1枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(非球面レンズ : 3枚 異常分散レンズ : 3枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(非球面レンズ : 3枚 異常分散レンズ : 1枚 HT-EBCコーティングレンズ)
(35cm~∞)
(標準0.6m~∞(ズーム全域) マクロ広角:30cm~10m 望遠:40cm~10m)
(標準0.6m~∞(ズーム全域)マクロ広角:30cm~10m 望遠:40cm~10m)
いままで富士フイルムの標準ズームレンズでは、軽さを選ぶなら「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」、画質を選ぶなら「XF16-55mmF2.8 R LM WR」とはっきり二分している構成でした。
今回の「XF16-80mmF4 R OIS WR」は重さ的にも、画質的にもちょうど中間のようなレンズですが、「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」は重量と大きさ、フィルターサイズにメリットがありますが、比べてしまうと、より強力な手ブレ補正に解像度の高さ、絞り羽根が増えた影響もあってかボケの柔らかさ、描写のヌケの良さ、焦点域の汎用性、防塵防滴、AF速度などなどメリットだらけです。
問題は発売当初の品薄もあってかまだまだ価格が高いことでしょうか。特に新品と中古の価格差がなく、同じ金額を出せば中古の「XF16-55mmF2.8 R LM WR」が手に入ってしまいます。どこに重きをおくのか悩むところですね。
作例もろだし
以前は「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」を愛用していましたが、やっぱりもう一歩引きたいなぁ。って場面が多々ありました。XF16-80mmF4 R OIS WRなら16mmで気持ち広めに撮影できるので余裕をもって撮影ができます。広角の2mmはやはり大きいです。18-135mmを敬遠したのは広角側を重視した所もあります。光芒は絞りでコントロールしますがf/16まで絞るとやや小絞りボケが目立ちますね。
広角端、望遠端では、僅かですが周辺の解像度が低下します。
中間の焦点域の方が周辺の解像度がいいため、無理に広角端を使おうとせず場面場面で使い分ければ、よりレンズの力が引き出せるでしょうか。
右上の玉ボケを見ると、非球面レンズの影響で玉ボケ内に年輪のような模様が出てしまいます。イルミネーションなどの撮影時に玉ボケを生かした撮影を好む方には相性が悪いと思います。
9枚の絞り羽根のおかげかボケは非常に柔らかいです。ピントリングのフィーリングがとても良いので、ピントの追い込む作業も楽しいですね。f/4でも十分ボケを楽しむことができます。
繊細な描写だからこそ、メカシャッターを使った際に時折現れる微ブレが気になってしまうのが残念な所です。
最短撮影距離はズーム全域で35cm。最大撮影倍率は0.25倍です。思いのほか被写体に寄れて撮影することができます。
ちなみにISO感度が400になっている写真が多いと思いますがこれは理由があってです。掲載している写真の8割はJPEG撮って出しですが、富士フイルムの「ダイナミックレンジ拡張」という、ハイライトを飛ばさないようにする設定を行うとISO感度が200だと使えないためこの設定になっています。ISO400が1段階、ISO800が2段階の設定です。富士フイルムユーザー以外がみたらなんのこっちゃの設定になりますので補足の説明です。
開放だとほんのり周辺の光量落ちが見られます。ボケが主張して前に出てくることがない描写がとっても好みです。
陰影の描き方も好み。ローキーの撮影もしっとりとした描写がハマります。
氷点下の中で撮影していましたが問題なく動作しました。雪が降っても心強いレンズです。
ちょうどいい光の飽和感です。
シャッタースピード1/15秒なので手ブレ補正の恩恵をしっかりと受けています。帆船もしっかり描写されており、80mmの解像度はいまいちだ。なんて言われていますが、私には十分すぎる解像度です。JPEGで出していますが、柔らかくしたいので基本的にシャープネスは-1、ノイズを弱で設定しています。
明るい光源に木の枝のような細い物が重なっても色ズレを感じず、色収差は見られません。「軸上色収差」「倍率色収差」は全体的によく抑えられていますね。
玉ボケもメインに据えなければいい塩梅の描写です。
富士フイルムのAPS-Cセンサーを生かした小型で高性能な造り。35mm換算24-122mmと広い焦点域でこれ一本で大抵の撮影を済ませることができ、開放からシャープで、ボケもナチュナル。手ブレ補正が心強く、WRの防塵防滴や-10度の温度耐性、重量も440gと軽量なので天候が心配な旅行や山登りなどのアクティブな撮影の用途にも最適です。
XF18-55mmF2.8-4 R LM OISからレベルアップしたい。機材の重さは減らしたいし、レンズの交換も極力すくなくしたい。けど写りは妥協したくない。そんな人のニーズにしっかり応えてくれるレンズだと思います。