昨年末に発売された、富士フイルムのXマウントで使えるオートフォーカス対応レンズ「Tokina atx-m 33mm F1.4 X 」をKenko Tokinaさんから縁あって提供していただきました。Tokinaのラインナップとしては始めてのXマウント用に販売されているレンズですがどんな写りをするでしょうか。今回は一ヶ月程使用してみての使用感を含めたレビューを書いてみたいと思います。
atx-m 33mm F1.4 X
Tokinaのミラーレスレンズのラインナップとして「atx-m」シリーズが設けられており、同時期に発売の「atx-m 23mm F1.4 X」と同様にXマウントで初めてのレンズになります。Xマウントはマウント情報を開示していないのでサードパーティが参入できない。という話がありますが、ここ最近は他メーカーでもXマウントの参入の噂があったりと気になる所です。
[35mm判換算]49.5 - 49.5mm相当
(超低分散ガラス : 1枚 マルチコーティング)
Tokina atx-m 33mm F1.4 Xの仕様です。レンズ構成は9群10枚、超低分散ガラス1枚にマルチコーティングが施されており、オートフォーカスは静かで高速なステッピングモーターを搭載。絞り羽根は9枚で柔らかなボケが期待できます。
外観・重さ
鏡筒はおそらくすべてが金属製です。仕上げはほんの少しだけ粒状感のある見た目で、質感はとても良好です。フードも金属製(レンズとの接続部はプラスチック)で一体感のある作りです。ピントリングや絞りには滑り止めのローレットが刻まれており、指にしっかりひっかかるので操作しやすい形状になっています。
最大径65mm、全長が72mm、重量が285gとAPS-C用のレンズとしてみるなら大きい部類に入るでしょうか。
フィルターサイズは52mm。Tokina atx-m 33mm F1.4 X はレンズ情報が鏡筒に書かれており、フロント側では省略されています。Tokinaのレンズキャップを始めてみましたがロゴが青く光っていました。
シンプルな外観なので、富士フイルムのカメラに取り付けてみてもまとまった印象です。
レンズ自体は直進的な花形フードを含めて長めでしょうか。X-T1桁機に取り付ける分には大きさ的にあまり違和感がありませんが、X-E機に取り付けるとやや大ぶりになってしまうのが気になりました。基本的に大きめサイズのカメラと合わせると使いやすいと思います。
絞りを操作するリングですが、ここの絞り値と目盛りの刻印が好印象なポイントです。
その上下にレンズ名、ロゴが違った大きさに違ったフォントで記載されているるので、多少ガチャついて見えてしまうのが残念です。
操作感
ピントリングのフィーリングは適度な重たさで程よいトルク感があります。絞りの操作は重たさが有り、クリック感のないシームレスな絞り(デクリック)になっていて好みが分かれると思います。f/1.4からf/16にかけてはデクリックな仕様ですが、f/16からA(オート)だけに軽いクリック感(引っかかり)がある仕様です。絞りの変化はレンズかカメラの画面を見ながらじゃなければ分からないのでクリック感が有る必要はあまりないのがもったいないですね。このクリック感が出せるのであれば、各段階で欲しいと思ってしまいました。撮影時においては、レンズ側では無段階ですが、実際は1/3段ずつ切り替わります。
もう一つ使っていて残念なのが、絞りが重たいが故に絞りを少し強めに操作するとマウントが左右にガタつくのが分かります。純正のレンズでも根本を掴んで左右に動かせば多少のガタツキがあると分かりますが、それが絞りの操作で発生してしまうような状況です。慎重に操作をすれば分かりませんが、ぐいっと操作するタイプの方は注意です。
個々を見れば悪くないのですが、合わせてみるとどうにも粗が目立ってしまってもう一歩な操作感だと思います。
どうしても避けて通れないのが XF35mm F1.4R との比較でしょうか。並べてみるとスペック以上に全長に違いが現れ、フードの長さ分の約40mmほど長くなってしまいました。ただしTokina atx-m 33mm F1.4 Xはフードを逆付けすることができるので、鞄への収納時には同等の大きさになります。
atx-m 33mm F1.4 X で撮ってきました。
APS-C用のレンズで33mmなので、35mm換算で約49.5mmのレンズになります。富士フイルムの純正レンズは35mm(35mm換算52.5mm)しかラインナップにないので、富士フイルムのレンズに慣れていると一歩引いたような感覚になり、逆に新鮮な画角のレンズになります。
画質は中央から周辺にかけてとても解像感し、シャープで繊細な描写です。色乗りもとてもいいですね。
絞り開放のF1.4での撮影時では、ピント面の解像度がとても高く、絞り羽根が9枚による影響か、アウトフォーカスにかけてとろけるようなボケ方が印象的でした。周辺減光もほんのり。といった印象です。
最短撮影距離が0.4mで最大撮影倍率が0.1倍です。近距離での撮影は苦手なレンズです。
厳しいなぁと思ってしまったのが明暗差の大きい場所での絞り開放時の収差で、パープルフリンジがとても目立ちます。中央から周辺にかけて細い枝にフリンジが発生して紫がかった写真となってしまいました。
絞ればしっかり改善されるので場面によって使い分けですね。
F8ですがなかなか派手な光条です。マルチコーティングのレンズなのでゴーストやフレアは標準的に抑えられていると思います。使い方に寄ってはフレアが現れますが、表現の一つとして使えるでしょうか。
近所の散歩をしていると猫が3匹仲良く並んでいたので少しずつ近づいてパシャリ。STM(ステッピングモーター)のオートフォーカスがとても静かで驚かせることなく撮影できました。オートフォーカスは爆速といったわけではないですが、迷わずすーっと合わせてくれます。ボケがとても柔らかくピント面のシャープさと相まってとても立体感のある描写なのでポートレート用にとてもいいかもしれません。
解像度のピークはF5.6でしょうか。周辺までしっかり描かれており、単焦点レンズらしいクリアな描写です。
Tokina atx-m 33mm F1.4 X は、解像度が高く柔らかいボケの描写性能と、高速で静かに動作するオートフォーカス、クリック感のない絞りが特長のレンズでしょうか。富士フイルムの純正レンズにはない、33mmという35mm換算49.5mmの画角は、使い慣れた50mmに近い画角となるのも悩ましいポイントです。クリック感のない絞りは賛否が分かれると思いますが、動画撮影をするのであれば生かす機会があるので一つの選択肢になると思います。
問題はどうしてもVILTROXの同スペックのレンズがちらついてしまい、希望小売価格の55,000円だと純正レンズが視野に入ってくるため割高感が否めないことでしょうか。
サードパーティのレンズで、Xマウントのオートフォーカスに対応したものが販売されるのはおそらく初期に販売されていたカールツァイスのTouitシリーズ以来6年ぶりになります。Xマウントユーザーとしてはサードパーティの参入はとても歓迎なので今後の展開に期待してみたいと思います。