XF16-80も手に入れてシステムが充実してきていますが、一式を鞄に入れるとちょっとしたお手軽に撮影したい時にやや軽快感が薄れて不便に感じるようになってきました。
カメラをポケットに忍ばせてささっと撮影できるサブ機を考えましたが、リコーのGR III、富士フイルムのX70、オリンパス TGシリーズ、はたまたGoolge Pixelなどとそれぞれの個性が光る選択肢が豊富。GRはAPS-Cの初代機を使ったことがあるし、絵作り的にもX70がいいなあ、スマホだけどPixelも面白そうだなと毎晩うんうん悩んでいましたが、突然思いつきで選択肢に現れた過去の憧れを昇華するNikonの「COOLPIX A」を購入してみました。
Nikon COOLPIX A
2013年3月21日に発売された現在までで、ニコン唯一のAPS-Cセンサーを搭載したレンズ一体型コンパクトデジタルカメラです。画像処理エンジンはEXPEED2、画素数は有効画素数1616万画素で当時としては珍しいローパスフィルターレス、18.5mm(35mm判換算28mm相当)f/2.8のレンズを採用しています。
専用のフードや光学ファインダーなどと気合を入れての発売でしたが、結局一代限りとなった不遇のモデルです。
ローパスフィルターレスのセンサーですが現行機のような目が痛いほどの解像度ではなく、必要十分なシャープ加減といった印象です。
周辺光量の落ちっぷりが凄まじいレンズです。光量落ちを補正するヴィネットコントロールも搭載されていない機種なので狙ってそのまま残したのでしょうか?
ニコンのコントラストAFの評価はいまいちですが、その通りの外しっぷりです。
GRは速いけどピントが合いにくい。COOLPIX Aは遅いけどしっかり合わせる。といった評をどこかで読んだ気がしますが、遅くてもピントは合いません。このシーンで抜けてんの!?という写真が何枚かありました。
最短撮影距離は10cm程度で思ったよりも大分寄れるといった印象です。カメラ本体の横に「AF-マクロAF-MF」スイッチがついていて「マクロAFモード」に切り替えることができます。ディスプレイの左側に拡大縮小ボタンがついているのでピントはなんとか合わせられます。
最初の印象はピントがすごい外れる。夜はフォーカスがさらに合わない。光量落ちがすごい。画質は思った以上にいい。操作性はやや難。
購入する前に分かっていたことですが、撮影していて気になるのは、露出補正がダイアル単体でできないことでしょうか。背面の左手にある補正ボタンを押しながら、右上ダイアルの操作になるので両手を使った操作が求められます。前面のレンズ横にカスタムファンクションボタンがあるので、そちらに「露出補正」を設定することで片手操作ができるようになりますが、後述の「ワンプッシュAF」を割り当てたいので難しいところです。
操作系統は一眼レフに寄せていますが、コンデジテイストも残してやや中途半端さが残るでしょうか。世代を重ねれば…と思いますが残念ですね。
このカメラはCOOLPIXで唯一カスタムピクチャーコントロールを設定することができ、ある程度自分の好みを反映させることが出来ます。この写真もカスタムピクチャーコントロールをかなりいじってますが撮って出しのJPGでもこれだけだせますね。
オートフォーカスは当時のニコンのコントラストAFなのでかなり厳しい印象です。こんなシーンでも気を抜くとピントが抜けています。
f/2.8の開放で撮影した写真です。左がレンズ補正を外した状態での現像、右がLightroomの初期設定でレンズ補正で光量落ちと歪曲を補正した結果です。補正するのはお好みですね。個人的にはレンズの光量落ちは好物なのでヴィネットを生かした写真になるのが必然でしょうか。
開放でも中心部は十分シャープなので質感の描写もなかなかです。光量落ちが激しいから自然と構図が日の丸に安定、雰囲気のある写真が撮りやすいカメラな気がします。
ボケ味も柔らかいですね。寄って撮影しても描写は安定しています。AF以外は安心して撮影できますね。
f/8まで絞れば周辺までしっかり解像。素晴らしいです。
この辺りでオートフォーカスなんて使わなければいいという結論に至りました。
このCOOLPIX Aは、前面のレンズ横にあるファンクションボタンに「ワンプッシュAF」を割り当てることができ、その設定を行うと半押しシャッターでのオートフォーカスが解除され、オートフォーカスとシャッターを切り離すことができることに気が付きました。レンズ横なので親指AFならぬ、薬指AFです。
さらに言えば、電源を入れるとピントが必ず無限遠でスタートするため、AFを切り離すことにより、電源ONからの撮影が高速化できます。
また、幸いにもMF用のピントリングがしっかり備わっていて、回すフィーリングも良好です。これを使ったほうが何回もAFボタンを押すよりも、快適に撮影することができますね。
小心者の私は、生活圏内や中途半端に人が少ない場所では大きいズームレンズ振り回すことに抵抗を覚えてしまい、あれも撮りたいがどうしようってことが多々あります。こういった場所でササッと写真が撮れるようになるのはありがたいです。
Nikon COOLPIX Aを数日触った印象としては、このカメラは決してサブカメラではないのかなと思いました。
絵作りも光量落ちのせいか雰囲気重視。絞って撮影した時の解像度は素晴らしく、レンズ交換式カメラのサブという立ち位置よりは、これはこれだけですごく面白いカメラです。また、写真のようにフードを合わせると、サブカメラとして持ち出すには存外大きく、旅行や散歩などで、このカメラだけを持ち出してラフに撮影する使い方が合っているように思います(カメラバッグを大きくすればいいだけですが)。さらにアダプターリングをつければフィルターを付けて遊ぶこともできるのが素晴らしいですね。このまま更に外付け光学ファインダーをゲットしつつ活躍させるのがいいような気がしています。